焦がれ香 根田 啓史(ねだ ひろふみ)さん
昨年の7月に新上五島町へ埼玉県から移住。漫画家としても活動しています。カフェのメニューに描かれているイラストも根田さん作。マスターの似顔絵はそっくりです。
有川港から車で5分足らず、有川中学校の近くにある宿とカフェ「焦がれ香(こがれこう)」。オーナーである根田啓史さんと、カフェのマスターである矢原賢一さんで営んでいます。オープンしてまだ半年ほどですが、島民の方で賑わう憩いの場です。
新上五島町との縁
矢原さんは元々仙台で7年ほどカフェを経営していましたが、コロナ禍に突入。お店を閉めることになり、訪れた上五島。「穏やかな時間が本当に気に入りました。時間の流れが心地よくて、以前は住むために、生きるために必死だったなぁと気付かされて。友人も出来たりしてこの場所が好きになりました。」そんな中、島内で知り合った友人経由で知り合ったのが根田さん。彼も知人を訪ねて若松島に滞在した事をきっかけに上五島が気に入り、ここで何かしたいという想いを募らせていました。「漫画家をやっていますが、漫画市場は年々飽和状態でもあって。元々教育や地方創生に興味がありその部分との掛け合わせで、自分にできることはないかと考えていました。漫画はデジタルで描けるので、空き家を買って二拠点もいいなぁと思い、自分がやりたい事をして行きたいという気持ちが強くなっていました。帰りのフェリーが矢原さんと一緒になってお話した時に、矢原さんがまたカフェをやりたいという想いがある事を伺って。船上で、一緒にやりましょうと言っていました。」
新天地で新たな挑戦
その後、空き家バンクで素敵な物件を発見し購入。その僅か2ヶ月後には2人でトラックに乗り合い、陸路と海路で上五島に移住しました。カフェの作り込みは矢原さん。「僕はDIYが得意なので、カフェ部分の内装は全て自分で作りました。雰囲気やインテリアは仙台でやっていたお店ほぼそのままです。
お店のコーヒーは9割が生豆から手焼き焙煎し、僕の好みである苦味系をメインで置いています。」カフェ部分はマスターである矢原さんに一任し、その他の部分を担当するのが根田さん。「カフェは島内の方々向けにやっているので、空いている部屋は島外のかた向けに利用したいなと思い、宿にすることにしました。ただ、宿営業は未知の業種で何をするにも試行錯誤で。初めは知り合いにモニターとして泊まってもらって、感想を聞いて改善してを繰り返しました。」
上五島の恵が大バズり
そしてある日、Xで投稿した画像が大バズり。「友人たちもせっかく遠くから来てもらっているので、長めの滞在の時は夕食をもてなすようになって。そしたらそれをすごく喜んでくれたので、食は満足度を高めるキーなのかなと思いました。そこで、その夕食を宿のサービスにしたんです。そして『うちの宿、離島なので夕食550円で出してるのにあんまり人がきません』と夕食を載せてXで投稿したら1500万人以上の方が見てくださって驚きでした。」写真には、蒸し牡蠣、アジやタコ、ヒラメなどの海鮮丼にお味噌汁、副菜付きと豪華。地元食材の豊かさはもちろんですが、地元のスーパーや魚市、いただきものなどを使って工夫された根田さんの献立がなせる技です。
新たな挑戦
「宿を多くの方に知ってもらう事は出来ましたが、いざ来てもらってからのおもてなしはまだまだ改善して行きたいです。とはいえ、今は本業でもある漫画の方が全然描けていないので、宿の営業日を絞ったりしながら、満足していただける宿と両立させて行きたいです。」有川港から徒歩でも10分かからない立地ながら、海が見えないという意見もちらほら。「歩いて3分くらいで海辺には出られるのですが、求められているのは眼下に海が見られる宿なのだなと気付かされました。なので、焦がれ香の近くの海辺の空き家も購入し、島外の人も、島内の人も利用できるような宿を作りたいと思っています。そして、マスターのスパイスカレーがとても美味しいので、お土産品として出せるようにもして行きたいなと思っています。」
自身の発信力など、持っている力を上五島のために使いたいという想いが溢れる根田さん。きっと益々進化を遂げるであろう「焦がれ香」に目が離せません。
【基本情報】
焦がれ香
電話:080-8540-0194
住所:新上五島町有川郷772-1 営業:12:00 ~19:00
定休日:木曜
【取材・執筆・掲載】fully編集部
【掲載先】fullyGOTO2025夏号